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「子供の肉は柔らかくて美味いんだよな」
竜桜の被害妄想が生んだ幻聴であった。それが脳内で再生され、動くはずもない剥製のライオンに激しい恐怖を覚え、立ち上がった。
振り向いた先にあったのは象の剥製。中の骨だけを見ると1つ目の巨大な怪物に見えるがその実小さなつぶらな瞳。
そのつぶらな瞳さえも今の両親からはぐれて一人きりとなった竜桜にとっては恐怖の対象であった。
「縄張りに入りやがって、象が踏んでも壊れない筆箱でも人間なら壊せるんだぜ?」
またもや幻聴が聞こえてきた。これ以上ここにいたら潰される。そう思い込んだ竜桜はその場から慌てて立ち去った。
這々の体で走り辿り着いた先は4階の恐竜コーナー。もう階段を登ったことすら覚えていない。竜桜がはぁはぁと息を吐きながら顔を上げると、目の前にあったのはブロントサウルスを襲うアロサウルスの化石であった。アロサウルスがブロントサウルスの尻尾を踏みつけて今にも食べようとしているおぞましさすら感じる光景。
竜桜にとってはそれすらも恐怖の対象になるかと思われたが、その様なことはなく、凄いともカッコいいとも言葉には言い表せない程の畏怖を感じた。
先程見たアフリカゾウの剥製よりも大きいそれを見て「こんなデカいのが動いていたのか」と言う感動すら覚え、いつしか尿道が痺れる程の尿意も忘れてそれを見上げていた。
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