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「諦めてさっさとイマジネーションピッケルの中にしまってやれよ。可哀想なことするなぁ?」
何度も踏み抜いている本人が何を言っているのだろうか。まさに不条理な暴君の蹂躙である。
ザーブルは涙目で俯いた。イマジネーションピッケルを握る手も怒りと悲しみで力が入る。
「謝るから許して…… 下さい……」
「ぶつかった時点でこうして謝ればこんなことにならずに済んだんだよ! 子供みたいに意固地になるからこんなことになるんだよ!」
「ごめん…… なさ……」
ザーブルは礼をし、頭を下げた。しかし、その頭の向く先は坊君の方ではなく倒れているアロサウルスの方であった。
「待てよッ!」
ザーブルが謝ろうとした今まさにその時、体育館のドアが蹴り開けられた。
蹴り開けたのは竜桜であった。その背中には昨日も使ったイマジネーションピッケルが背負われていた。
「俺は白亜竜桜! こいつのルームメイトだ!」
「あ? こいつのルームメイトが何しに来やがったんだよ?」
「肩がぶつかったぶつからないぐらいで、こんな事するなんておかしいよ! 単なるいじめじゃないか!」
「はぁ? 俺はちょこっと新入生シメてやっただけだよ!」
そう、単なる新入生に対する暴力である。坊君が自分が先輩として威厳を示したいだけの下らない自己顕示欲によって行われた恐竜バトルであった。
「アロサウルスは集団で狩りをしていたって学説がある! だから俺こいつを助ける! 文句はないな!」と、竜桜が参戦を高らかに叫んだ。
「おいおい、恐竜バトルに2対1なんてあるのか?」
坊君がオールバックの眼鏡の優男に尋ねた。彼は顎に指をつけ、暫く考え込んだ。
「いいだろう。まだ昨日掘り出したばかりの恐竜をバトルにけしかけた僕にも責任はある。今回はアロサウルス集団狩猟説を採用して彼と二人でバトルをすることを認めよう」
言質が取られた。恐竜バトルでは審判の言うことは絶対である。
「ケッ! まぁ俺としては昨日入ってきた新入生全員同時に相手にしてもいいんだけどな! これぐらいに俺のティラノは強えんだぞ!」
「言ったな! 負けたらぶつかった事をちゃんとザーブルに謝れ! いいな!」
「おう! この頭が地面、いや、マントルに突っ込むまで擦りつけて謝ってやるぜ」
このやり取りを見ていた氷河校長は笑みを浮かべていた。
「随分と威勢のよい少年が入ってきたもんだね? データある?」
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