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本日の座学の授業はイマジネーションピッケルの仕様についてであった。
しかし、この一ヶ月で「恐竜バトル」を経験していた生徒たちにとっては座学で学ぶまでもなく自分で触って覚えていた。それ故に真面目に授業を聞く者は少なかった。
「イマジネーションピッケルの開発者はボルフェス博士と言う偉大な恐竜研究家にして科学者で…… 恐竜にはコストがあって…… 恐竜が大きければ大きい程…… そのコストも…… イマジネーションピッケルに入る恐竜には限界があり…… その限界は皆さんの……」
最前列の席に座りホワイトボードに書かれたこれらのことをノートに書き写す者、最後尾の席で船を漕ぐ者、手紙を回してトークをする者、様々であった。こんな学級崩壊に等しい状況ではあるが、イマジネーションピッケルの仕様に関しては学校側もあまり重要視しておらず、この状況を許すに至っていた。
竜桜はと言うと中間辺りの席で船を漕いでいた。その両脇では、ジュラとザーブルが真面目にノートを書き写していた。
授業が終わり、鐘が鳴ると同時に竜桜はスッと立ち上がり背伸びをして大欠伸。それを見たジュラが嫌味を吐いた。
「よくお眠りでしたね?」
「いやぁ…… 初日から恐竜バトルしてたから…… このピッケルの扱いは完璧なもんで」
「完璧って言葉はあまり使わない方がいい。完璧って言葉はそんなにそう簡単に使って良いものじゃない」
ザーブルはこう言い残して教室から出て行った。その顔は呆れた者を見るような目をしていた。
「無愛想な割に真面目だなぁ」
竜桜はこう言いながら軽く頭を掻いた。すると、掻いた頭からいくつかの白い塊が落ちてきた。
「あら、日本人の頭垢ってこんなに大きいの? それともあなたが頭を洗ってないだけ?」
「失礼だな。毎日シャンプー・リンスで爪立てて洗ってるよ」
「爪立てて頭洗うの良くないよ? 頭皮に傷がつくよ?」
ジュラが竜桜の頭を軽く撫でた。すると、夥しい数の白い塊が落ちてきた。
頭垢とは違う何かを拾って眺めた。
「これ、頭垢じゃないわ。消しゴムの欠片よ」
竜桜の頭に乗っていたのは消しゴムの欠片だった。こんな普通ではありえないものが頭に乗る状況は一つしかなかった。
「誰かが後ろから投げてたとか?」
「それしかないじゃない? こんな下らないイジメみたいな真似されるなんて、あなた、いじめられてるんじゃないの?」
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