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第二章、鎧と屋根
竜桜達が入学してから約一ヶ月、世間はGWの長期休暇を迎えていた。だが、恐竜学苑は「世間」ではないために通常通りの授業が行われている。
恐竜学苑には偏差値の高いような私立中学クラスの授業に混じって「発掘」と言う特殊教科があり、内容はそのまま「化石発掘をする」ものである。
入学初日に行われた「最終試験」では化石発掘の成功が必須であったがこの「発掘」では掘り出せなくても問題はない。
「初日で運使い切ったのかな?」
竜桜がカツンカツンと地層にイマジネーションピッケルを叩きつけながら愚痴を零した。竜桜は、この一ヶ月の「発掘」の授業で何も掘り当てる事が出来ずに地形の変化に手を貸すばかりであった。
「最近は恐竜バトルもないし、増やす必要もないんじゃないかな?」
こう言うのはジュラであった。そのジュラは「最終試験」で竜桜に助けて貰っての合格であったことから引け目を感じており、取り分け「発掘」の授業には気合が入っていた。
その気合に化石発掘の神様が応えてくれたのか、ジュラは新入生には珍しい「二匹目」を与えられたのだった。見つけたのはベイシャンロン(北山竜)、ダチョウの形をした獣脚類のオルニトミムス属の中で一番大きなサイズを持つものである。この学校ではオルニトミムス属が発掘されると主にこの広大な学校の移動用として使われる。彼女もその例外ではなく、移動の度にイマジネーションピッケルよりベイシャンロンを呼び出しては乗り回していた。
「いつもベイシャンロン乗り回してるけど、プテラで飛んだ方が楽じゃない?」
「高い所、嫌いなのよ」
「へー? じゃあ関空に降りる時も大変だったんだね?」
「違うわよ、あたし船で来たのよ。降りたのは福井港」
「そこまで嫌いなんだ…… 飛行機」
「あんな高い所にいて平気なんて信じられないわ!」
ジュラがこうして叫んだところでザーブルが会話に割り込んだ。
「次は座学だからそろそろ切り上げろよ。竜桜」
「あ、ああ。分かってるよ」
このやり取りをジュラは険しい顔をしながら眺めていた。
「あのMrブアイソーと仲いいじゃない? 一応ルームメイトだから特別扱いな訳?」
ザーブルはこの一ヶ月で何を話しても激しい拒絶をされてしまうため、同級生から「Mrブアイソー」とあだ名されていた。
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