第四章、真実の少年

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第四章、真実の少年

 八月の蝉時雨が鬱陶しく感じる頃、竜桜はジュラとザーブルを連れて東京の実家に戻っていた。ジュラとザーブルは母国の実家に帰ろうかと、考えたがまだ志半ばである故にやめておいた。 そんな中、3人は東京の上野博物館に足を運んでいた。 「やぁ竜ちゃん、久々だねぇ」 親しげに竜桜に声をかけるのは上野博物館職員の月谷ヘレラ(つきたに へれら)。恐竜学苑北米校出身で上野博物館にある恐竜の化石の管理を任されている。ちなみに日系アメリカ人の二世である。 「ヘレラさん? お願いだから「ちゃん」づけはやめてほしいな? もう中学生だよ? 俺」 「だーめ、あたしにとってはいつまでも可愛い竜ちゃんだもん」 ジュラはこのやり取りを嫉妬の目で眺めていた。 「あの、仲良さそうですけど? どんな関係ですか?」 ジュラは冷たいトーンでヘレラに尋ねた。 「博物館仲間かなぁ」 竜桜はニューヨーク自然史博物館にて恐竜に心奪われて以降、上野博物館に通いつめていた。この時に知り合ったのがヘレラであった。 当初こそヘレラは竜桜からなぜなぜ期の子供の様に恐竜の化石の前で色々と聞かれ鬱陶しく感じていたが、時を経ていつの間にやら彼女よりも恐竜について詳しくなっていたことにより、心惹かれていたのであった。 「どう? 恐竜学苑は? 楽しんでる?」 「毎日が楽しくて楽しくて」 ヘレラは3人が肩から提げているイマジネーションピッケルを見て言った。 恐竜学苑の生徒はいつ何時恐竜の化石が埋まった地層を発見しても良いようにイマジネーションピッケルを常時持ち歩いている。それが休みの日であっても例外はない。 「懐かしいなぁ。イマジネーションピッケル。あたしも学校にいた時は、毎日カツンカツンしてたなぁ」
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