星と滑り台

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 地上よりも2mだけ高い場所で夜空を見上げながら、陽菜は言った。 「あ、星。2つ、3つ。あれあれ、10個くらいある?」 「そのくらいだ」 「高校を卒業したらさ、私達も会わなくなるのかな」 「そうかもな」 「そうだね。毎日顔を合わせなくとも、友達は友達のまま。慶一くんは、慶一くんだもの」 「……やっぱり東京で一人暮らしするのか?」 「うん。大学に受かればね」  たまには帰って来いよ、そう言いたかった。けれども。 「そうか」  としか俺は言えなかった。 「慶一くんは、この近くで就職するんでしょう?」 「ああ」 「私さ、いつかまたここに……」  陽菜はそこまで何かを言いかけて、しかしその続きは言わなかった。 「何?」俺は気になって続きを促した。 「ううん、なんでもない」 「そうか」 「東京に行ったら、何か変わるかもしれない。私の今の気持ちは、今だけのものかもしれない。将来の約束ができるほど大きな覚悟なんて私には……」 「何の話かわからない。でも、陽菜がそう思うのなら」 「ありがとう、慶一くん」 「別に」
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