星と滑り台

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 俺に残っているものはなんだ。俺が望んでいること。心の向く先。小さなことでもいい、まずは何か。  ああ。わかっている。わかっているんだ。全ては甘えた自分の弱さだと。何もしてこなかった自分。陽菜に甘え続けて何も育っていなかった自分。  なんということはない。当たり前に近くにいた陽菜が当たり前にいなくなった、ただそれだけのことで俺はおかしくなってしまったのだ。  俺はどうしたかったのか。あの時俺は、陽菜に告白されたかった。いや違う、そうではない。俺は例え距離が離れていても、陽菜がいてほしかった。恋人という形で繋がっていたかったのだ。  俺が一歩を踏み出さなければならなかった。俺が告白しなければならなかった。俺はタイミングを逃してしまった。だから俺は。
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