星と滑り台

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 焼肉屋で俺は1人だった。外から見れば、皆と楽しく談笑しているようにしか見えなかっただろうが。  大学生になった皆の話す言葉は、まるで違う言語のようだった。言葉は理解できるのだけれど、意味が理解できなかった。皆は輝いていて、心底楽しそうに見えた。それぞれが単位の事で悩んでいたり、将来のことを考えていたり、ただただ自由に遊んでいたりしているようだった。  それまでの俺は、大学に行くということがどういうことなのか理解できていなかった。高卒だと就職先が限られるだとか、そんなことはどうでもよかったのだけれど、ただ俺はもう皆と同じではないと感じてしまった。  夜勤の仕事をしている自分と、大学生の皆。俺はお金を稼いでいる。のんびりと遊んでいるだけの皆とは違う。そう思えればまだよかった。その場に夏帆はいなかったけれど、夏帆も皆も普通の大学生で、そして俺はそうではないんだと思ってしまった。  理由はわからない。俺は悲しくなった。
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