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スーパーのアルバイトで品出しをしていた壮は、たまに、当日が消費期限の売れ残りの惣菜をもらえることがあった。
おかげで、今日の夕飯は、半額のラベルを貼られた小松菜と油揚げの煮浸しと煮物、ポテトサラダだ。
アパートに帰り、ローテーブルにパックのまま並べていく。
秀がやってきた。
道中寄ったコンビニ袋の中から、ビールを取り出す。
「おっ、今日は美味そうなモン並んでんなぁ!」
そう言った途端、口をつぐむ。
「……壮、お前、……ウサギ飼ったの?」
冷蔵庫からパインジュースを持ってきた壮は、部屋の隅でピンと耳を立て、揃えた前足を浮かせて立ち上がっているウサギと、テーブルにビールを置こうと中腰体勢のまま静止している親友を見て笑った。
「ああ、この間、朝起きたら、いきなりいてさ」
「なんだそれ! 酔っ払って勢いでペットショップで買った……わけねぇか、お前、まだ酒飲めないもんな」
「育成アプリ入れた翌日にな……あれ」
壮がアプリを見せようとスマートフォンの画面を探すが、なぜか見つからない。
「ホンモノが来るアプリなんて聞いたことねぇし、有り得ねぇぞ」
秀がやっとビールをテーブルに置くが、視線はウサギから離せないようだ。
「なんて名前?」
「え? ウサギって呼んでる」
「まんまかよ!」
「ほーら、ウサギ、こっちおいで。友達のシュウだよ、怖がらなくて大丈夫だよ」
膝をついて座ると、ベージュ色のウサギの下に手を入れ、そっと抱いてから、テーブルに戻る壮を見て、秀が少し感心した顔になった。
「随分抱き方慣れてんな」
「ペットショップのお姉さんに聞いたし、本も買ったからな」
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