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テーブルの下に置いてある雑誌と本を、秀は手に取った。
「あれだな、きっと、ペットショップから逃げてきたんだな」
「うーん、ゲームの運営からは全然返信が来ないから、実はそうなのかも知れないけど、こんなアパートの二階に来るか?」
「それか、ウサギがたくさん生まれたけど育てられなくて困った人がダンボールにでも入れて、この辺りに捨ててったか」
「かもな」
適当に返事をした壮はウサギの額と背を撫で、撫でるたびに気持ち良さそうに目を細めるウサギを見ながら、完全にニマニマと破顔していた。
それを眺めていた秀も、そうっと手を伸ばしてみる。
壮の膝で寛いでいたウサギは、秀の指の匂いを嗅ぎ、ペロペロと舐めた。
「わ! かわいい!」
「だよな!」
「これ、オス、メスどっち?」
「区別つかねぇ」
「避妊手術した方がいいんじゃね?」
「手術代かかんだろ。外に出さなきゃいいんだよ。なー、ウサギちゃん!」
「俺にも抱っこさせて!」
「そーっとだぞ。ウサギは骨が弱くてすぐ骨折するらしいからな」
「お、おう。わかった」
壮の言うことに頷き、秀も慎重な表情になる。
「うわー、ふわっふわっ! ホントにもふもふだな!」
膝に優しくウサギが運ばれると、恐る恐るだった秀も、ビールそっちのけでウサギを撫でていた。
「ネザーランドドワーフって種類が一番近いかな。クリーム色みたいな薄いオレンジみたいなベージュで顎の下と腹は白いから、フォーンって色になるのかな」
ウサギの耳は壮の声をキャッチしているのか、耳の向きを壮の方に向けている。
秀が喋る声は聞き慣れないのか、彼が話す間は耳を澄ませるようにピンと立てていた。
そのうち、ウサギは壮を見られるように身体の向きを変え、秀の膝の上で座り直した。
「すげぇな! お前のことわかってるみてぇだな!」
秀が感心すると、壮は満更でもないように笑った。
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