(1)出会いは突然に

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 トボトボと歩く夕焼けに照らされた河川敷では、キャッチボールをしている小学生くらいの男子たち、敷物を敷いて酒盛りでもしてるんだろうか、自分と年の近い暇そうな男たちもいる。  空を見上げる。  あたたかい色に染まっているその風景は今は物悲しく見える。うっすら下の方に見える紫色、あれが徐々に空を覆い尽くし、暗闇に染めてしまうのだ。  その絶望━━壮は絶望と決めつけた━━を、アパートで一人で迎えなければならない。  足を速める。涙がにじまないうちに部屋に戻らなくては! 「ちきしょー! 俺のいったいどこが不満だったんだよぉ! 清夏(キヨカ)のヤツ! カオが王子じゃないからか? K大じゃないからか? 男の良さはそこで決まるのかよ!」 「……そうだったんじゃね?」  アパートに呼びつけられた(シュウ)は、缶ビールを開け、座卓には柿の種、するめ、コンビニで買ったキャベツの漬物、胡瓜のぬか漬け、ソーセージの盛り合わせを並べていった。 「うわっ! 何お前こんなに買ってきてんの?」 「安心しろよ、買ってきたのは漬物とソーセージだけだから。後は、家にあったのを持参した」 「……いいなぁ、地元は」  壮は半額だけ払うと、冷蔵庫からペットボトルのオレンジジュースを出してきて、秀と乾杯した。 「そうか! 俺が飲めないからか! 清夏はハタチ過ぎてるからもう酒飲めるけど、俺は早生まれだから来年まで飲めないし! イケメン・ハイスペックK大王子は飲めるのか? くっそー、なんもかんも俺を上回ってんなー!」  秀はビールを飲みながらテレビを点け、美少女アニメを見ていた。 「だからお前もさー、リアルなんかやめて二次元にしろよ。二次元は裏切らないんだぜ。しかも、リアルよりカワイイし」  秀は高校の時、「好きな人が出来たから」とだけ言われ、三週間で別れた経験を持つ、今の壮の気持ちをわかってくれる貴重な友人だった。  だが、そのアドバイスは壮には適しているとは言い難い。 「はあ、……癒されてぇな」  胡座をかき、放心状態でジュースを一口飲んだ壮が、ポツンと呟いた。 「誰かに優しくされたい」 「うんうん、そうだな」  秀が「あははは!」とテレビを見たまま声を上げて笑う。  気がつくと、ソーセージは、壮が一口も食べないうちになくなっていた。
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