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「お、お前、どこから入ってきた? いや、冷静に考えろ、俺。普通に考えて、こんなアパートの二階なんかに、ウサギがわざわざ紛れて来たりしないだろ」
一人暮らしをしているせいで、いつも考えていることを無意識に口に出してしまう壮は、動揺している時も同じだった。
「まさか、昨日見てたアプリの……?」
スマートフォンを開けてみる。
『「もふもふ育成シュミレーションゲーム!」をインストールありがとうございます! さあ、何が来るかな?』
アプリの画面を開くと、真っ先にそんなことが書かれていた。
「寝ボケて知らない間に入れてた? ……にしても、俺、猫ならいいかもって思ってたんだけど、なんでウサギ!? しかも、本物って……! 飼い方もわかんねーし」
ふと振り返ると、クリーム色をしたウサギが部屋の隅にまで引っ込み、身体を震わせていた。
アプリの説明書きを見ると、ウサギの場合は大きな声に驚いたり、初対面でジロジロ観察すると緊張する、とあった。
「……そっか、ウサギは耳が敏感なんだもんな。うっかり声デカくならないように気を付けよう……って、だからなんで本物!?」
アプリの運営に問い合わせのメールに送る。
「だけど、アプリとこのウサギが無関係だったら思いっきり恥ずいし、ここにウサギがいる謎も深まるばかりだぜ」
返事が来るまで気が気ではない。
アパートの隣人にも尋ねるが、ウサギのことは知らなかった。
もしかしたら、秀が持ってきたのかも知れない。
LINEで「お前ウサギ連れてきた?」と尋ねると『は? 意味不。お前大丈夫?w』と即答された。
「親が送ってきた……わけねーし」
念のため、清夏にも訊いてみる。
『なにそれ? 私がウサギなんか持ってくわけないでしょ? だいたい、あんたんち知らないし』
ついでに、『彼氏に知られたくないから、壮のこと「友達」から削除していい? っていうかするから』と返ってきた。
「うう……」
思わず泣きそうになる。
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