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ぽこーん
アプリの通知音だった。
『お家のもふもふちゃんは元気かな? 粗相をしても怒らないで躾けてあげてね!』
「粗相……だと……?」
さっ! と、ウサギを見ると、部屋の隅から窓のカーテンの下に身体を低くして座っていた。
そして、元にいた場所には、小さい丸い粒が転がっていた。
「あっ! お前、何してんだよ!」
ビクッとして、ウサギが縮こまった。
「そ、そうか、怒っちゃいけないんだったな」
運営から返事が来る前に、まずは、トイレを買って躾けておこう。
じゃないと、こっちが被害を被る。
こわごわウサギのフンを片付けながら、駅の手前のショッピングモールにペットショップがあったことを思い出した。
アプリは無料だが思わぬ出費だ。課金か。
ぽこーん
『ウサギ系は骨が弱いから、特に抱っこの仕方には気を付けよう! 後は、もふもふちゃんをどう育ててあげたらいいか、自分で調べて考えてみよう!』
「えーっ、なんだよそれ! もう丸投げかよ! 何だこのクソゲー!」
運営から返事は来ないが、壮は、やはりこのアプリとウサギが関係していると確信した。
ペットショップでは、とりあえず、ウサギ用のトイレ一式と餌である牧草とペレットという固まった餌と、ウサギが身を隠しやすいような木で出来た箱のハウスを、店員に聞いて購入する。
家に着くと、リビングでは、ウサギが前足をちょこんと揃えて、背を丸めてちょうど正面に座っていた。出迎えているように見え、壮は思わず微笑んでしまった。
トイレを設置し、教えるために抱こうとウサギに手を伸ばすが、ぴょんぴょんと離れていくので、「いいか、ここがトイレだからな」と声だけかけた。
ウサギは徐々に、興味津々に黒い瞳を輝かせ、ぴょこん、ぴょこんとゆっくり近付いていくと、しきりに匂いを嗅ぎながら、トイレ用の網に、そうっと、ふさふさの前足を踏み入れた。
「気に入ったか?」
小さめの声で、壮は言った。
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