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愛美の書いたシナリオ通りに美希は裕彦の休みを狙って駅前の大きな書店の中にいた。
休日は登山だテニスだゴルフだと忙しくしている裕彦であったが、月に一度は決まって本屋と洒落たカフェ、映画などを巡るのだという。
美希はついでに自分の好きな作家のコーナーでも見て待とうと思ったが、どうにも落ち着かずソワソワと店内を行ったり来たりしていた。
愛美には電話で結果を報告する約束になっていたから、美希一人でこの任務を遂行しなければならない。
適当に嘘をついて逃げたって良かったのだ。
しかし高額な学費を負担して貰うからにはやるべきことをやらねばと美希は気負っていた。
元来真面目な質なのである。
棚の影から入口を見張っていると、愛美の見せて来た写真と全く違わない目鼻立ちの整った好青年が入って来た。
背は想像よりも高く、スラリと伸びた手足はモデルのようだった。
高級感のある、しかし嫌味ではないセンスの良い衣服を身に纏いぴんと背筋を伸ばして歩く姿に店内の客は釘付けになる。
しばらく呆然とその姿を見つめていた美希であったが、シナリオを思い出し慌てて棚の影から飛び出した。
"裕彦はミステリーを好んで読む、きっとミステリーコーナーに行くはずだからそこで待ち伏せていて"
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