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少女が泣いている。世界は雨だった。
太陽は無残にも雲に覆われ、僕は降りしきる雨を遮ることもできず、ただただその身に受け続けることしかできない。
体を動かそうと試みるが、地へと投げ出された四肢に力を入れることはできなかった。
あぁ、僕は彼女を守ることが出来なかった…。
なぜ立ち上がらないんだ。彼女が目の前で涙を流しているのに、なぜその涙を拭ってやることもできないんだ。
なぜ、なぜ、なぜ…自分への怒りや悔しさがこみ上げる。
何より、彼女にもう会えない。そう考えると悲しくてたまらなかった。
しかしその悲しみも怒りも僕の意識とともに朧げになっていく。
「たとえ…」
彼女が僕の冷え切った右手に触れ、言葉を紡ぐ。
悲しみの内に強い決意を孕んだような声で。
「たとえ会えなくても私たちは心で繋がってる。だからきっと私を見つけ出して」
「ずっとここで…待ってるから」
彼女の言葉をそれ以上聞くことは叶わず、意識は暗闇へと落ちていった。
地に打ち付ける雨よりも深く深く、喪失の哀しみを抱いて。
「必ず…生きて…また…相棒…」
途中、誰かの声が響いた気がしたが、それが誰のものだったのかを考える間もなく僕の意識は完全に暗闇へと落ちた。
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