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授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響き、同時に激しい修羅場の開幕を告げる。
その音を聞き、気合を入れるのは私だけではないだろう。
「じゃあ、これで終わりにするか。日直、号令を」
先生からの指示を受け、まくし立てるような号令が起こるのは日常茶飯事。呆れながらも付き合ってくれる先生の優しさに感謝しつつ、熱き戦いの火蓋が切られる。
熱き修羅場を前にすれば、一礼した姿勢を戻す瞬間さえ惜しい。そのため、姿勢を戻しながら移動していることが大半だ。この状況で一番の問題点は、私に限った行動ではないということ。つまり、前方不注意でスピード加速する暴走特急が狭い教室にゴロゴロいる。となると、必然的に引き起こされる二次災害は……衝突事故しかないだろう。
「いた……っ! って、矢坂(やさか)じゃん! もう無駄に図体デカすぎ!!」
一応気をつけてはいるものの、前方不注意且つ往来が激しい教室での衝突リスクはやはり大きい。今日も自分の席から3歩も歩かぬ内に、クラスでも大柄な矢坂慎一(しんいち)に思いっきり体当たりしてしまう。
私自身、小柄な体型をしているため、矢坂と衝突すると結構衝撃が激しい。どう切り取って見ても矢坂はぶつかって来ていない。どう見ても、私が加害者だ。それでも悪態めいた発言をしてしまうのは、単にダメージの有無による八つ当たりに他ならない。
「ははは、悪い悪い」
「全然悪いとか思ってないでしょ?」
「いや、悪いと思ってるよ? 俺にぶつかってたがために足止めくらって、一番になり損ねたみたいだし?」
「へ? 嘘!?」
矢坂の発言を受け、目的だった佐藤(さとう)くんに群がるクラスメイトたちを確認し、ガックリと項垂れる。
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