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ねぇ、私とあなたの子供は立派に育ったのよ。あなたがおっかなびっくりで抱いたあの子、ますますあなたに似てきたわ。あなたの変人性と文才は継がなかったみたいだけど。
子供が気になるのなら相手をしてやれば良かったのに。あなたって、そういうところ不器用よね。だから周りに家庭を顧みないヒドイ男って言われるのよ。
なんて言ってもあなたはそういうのを気にしない男だったわね。私も気にしなかったし。
あなたが何処で何をしようと、私は口を挟まない。
あなたは自由であることで輝ける人だから。
あなたがたまに帰ってきて、私に笑顔を見せてくれたらそれだけで、それだけで怒りも悲しみも寂しさも何もかも吹っ飛ぶの。
だからね、帰ってきて。
10年近くも経ったんだから、もう帰ってきても良いじゃない。
あなたが帰ってきたら、あなたの墓を壊して掘り返して、あなたの代わりに入れられたカメラを取り出して渡すわ。
それで私を撮って。
またバカみたいに笑いましょう。あの頃みたいに。
あなたの帰る場所はここなんだから。
誰が何と言おうと、私は待っている。
ずっとずっと、愛するあなたを待っている。
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