突然の帰郷

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突然の帰郷

僕は、騒がしい蝉の声を聞きながら、日陰がまったくない田んぼに挟まれた道を、汗だくになって歩いていた。 ズボンのポケットに入れていたタオルハンカチで、顔に流れ落ちる汗をぬぐう。 ーー昔もこんなに暑かったのだろうか?子供の頃は、毎日外で遊んでいても、こんなにぐったりとはしなかった。いや…、ぐったりとしているのは、暑さのせいだけでなく年のせいもあるのかな。 熱波で揺れる田んぼを見て、つい苦笑を漏らした。 しかし暑い。飲み物を持って来ればよかった。ぐるりと見回しても田んぼしかなく、自動販売機すら見当たらない。 座って休みたくても、日陰もないから余計に疲れそうだ。 どうしたものかと立ち止まって思案していると、僕の脇に風が吹いて、一台の自転車が通り過ぎた。 羨ましげに自転車をこぐ男の人の背中を見ていると、数メートル先で、自転車が急ブレーキをかけて止まった。 ーーえっ。僕、見過ぎだった? 少し不安な気持ちで、ゆっくりと振り向く彼を見る。こちらを向いて、僕を瞳に捉えた彼が、突然自転車を放り出して走って来た。 ーーひぃっ!なんか怒ってるっ? 僕はビクリと肩を揺らして固まってしまう。 ーー今の僕は、暑さでフラフラなんだ。あんなガタイのいい彼の大きな手が触れただけで、きっと倒れてしまう。 そう思って、力を入れた僕の身体が、いきなり力強い腕に抱きすくめられた。
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