再会

1/1
168人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ

再会

僕はびっくりして、ますます石のように固くなった。すると、僕の頭上から、耳に心地よい低音の声が聞こえてきた。 「凪っ!おまえ…凪だろ?会いたかった…」 「……翔太?」 僕は顔を上げて、懐かしい声の主を見た。年を経て、精悍な顔つきになった彼に、僕の心臓があの頃のようにドキドキと高鳴る。 ここを離れた一番の原因の彼に会って、 僕の記憶が一気に過去へと引き戻された。 僕と翔太は、歩き出す前から共に過ごした幼馴染だ。家が隣同士というのもあって、毎日一緒に遊んだ。家族ぐるみで仲が良かったから、いろんな行事はもちろん、旅行もよく一緒に行った。 僕は小柄で色も白く、よく女の子に間違われていた。一方翔太は、平均よりも背が高く、浅黒い肌に整った顔立ちをしていた。だから、幼稚園の頃から、すでに女の子からモテていた。それに、明るい性格で運動も出来たから、男の子からも人気があった。 いつも大勢の人に囲まれてる翔太だったけど、必ず最後には僕のところへ来る。何かをする時は、いつも僕と一緒にしてくれた。 小学三年の時に、僕の母さんが家を出て行った。よく家に来ていた宅配業者の若い男の人と、どこかへ行ってしまったんだ。 この時、ひどく落ち込んだ僕を、翔太がつきっきりで慰めてくれた。翔太が傍にいてくれたから、僕は耐えることが出来た。 だけど、このことがあってから、僕は女の人が信用出来なくなってしまった。女の人は、いつかは裏切って離れてしまうものなんだと思い込んでしまった。 だから、自然と僕の恋愛対象は男の人になったんだと思う。そしていつしか、ずっと傍にいる翔太を強く想うようになった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!