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朝、太陽の光で目が覚めた。
彼女は、大体の家の位置を教えると、信じられない速さで僕を家まで送ってくれた。
全然寝ていないはずなのに、頭はとてもスッキリしていて、心なしか体も軽かった。
仕事内容は別に変わらないし、大変なことは多い。でも、帰社時には必ず空を見るようになったし、週末は外に出て、まだ行ったことのないところに電車で行ってみたり、興味のある展覧会に足を運ぶようになった。
そのおかげで、会社で少しずつ良いアイディアが出るようにもなった。
あの時、終電を逃して彼女に会うことがなかったら、こんなに明るい気持ちになれなかっただろう。
お礼を言おうと思い、会社の最寄駅にあった居酒屋に足を運ぶ。だが、帰りに、いくら探してみても、終電の日に立ち寄った居酒屋はどこにも見当たらなかった。
居酒屋に入った時に、彼女は「迷い込んじゃいました?」って聞いてきたことを思い出す。きっと、本来は迷い込んではいけない場所だったのかもしれない。
僕は、ホームに立ちながら、空を見上げた。今日の月は満月だった。
彼女は、またどこかで、僕みたいな人間を救っているかもしれない。そう考えると、心がじんわりと温かくなった。
さようなら。そしてありがとう。
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