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彼女は、隣でニコニコしながら、僕がさした星をもう一度自分でなぞってくれた。
「こんないくつもの星の中から、自分で形を切り取って、それに名前がつけられるような世界なんです。素敵じゃないですか」
手は届かないけど、いくつもの石の中から、綺麗な宝石を選ぶような感覚で、わくわくした。
「あなたも同じです。狭い世界にとらわれないでください。自分の人生はこの星の数くらい可能性があって、自分で自由に選びとって形にしていけるんです。」
僕は、思わず彼女を見た。
彼女も僕をまっすぐに見てきた。
「今見ている世界が、あなたの人生の全てなんかじゃ決してない。あなたの知らない場所や見たこともない景色はまだ山のようにあるんだから」
「休みの日にはとりあえず外に出ればいいかな?」
「上出来です」
波の音が、静かな夜に響き渡る。
星がキラキラと光を僕たちに浴びせてくれた。
それから僕たちは色々な話をした。僕の仕事の話。上司がくいだおれ人形に似ているという話をしたら、お腹を抱えて笑ってくれた。彼女は、居酒屋で働きながら、こうして俺みたいな人を何人か見かけて手を差し伸べているらしい。
「珍しい仕事だね」と言うと、「使命みたいなものなんです」と少しだけ力強く言った。
あっという間に時間は過ぎた。
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