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「お待たせしました。ビールと唐揚げで~す」
店員のお姉さんが、ビールのジョッキを笑顔で運んできてくれる。
「ありがとうございます」
「なんか、人生に疲れちゃったって顔してますね」
お姉さんは、ジョッキと唐揚げがのった皿を机に置くと、僕の席の向かい側によいしょと腰をおろした。
長い髪をポニーテールにした、目鼻立ちがくっきりした美人だった。
最近、よくないことが多いから、神様からのちょっとしたご褒美かもしれない。
「実は、仕事で終電逃しちゃって」
「それは大変ですね・・。あ、とりあえず乾杯しましょ」
彼女は、どこから持ってきたのか、自分の分のグラスを軽く掲げて、乾杯を促した。
カチンとガラスが触れ合う音がした後、僕はビールをぐいっと飲んだ。
体に染み渡る優しい味がするビールだった。
向かいの席の彼女も、ビールを飲んで幸せそうな顔をする。思えば、誰かと一緒にご飯を食べるのも、とても久しぶりだった。
「最近、素敵なことありましたか?」
彼女は、ビールのグラスを片手に持ったまま、僕の顔を心配そうに見た。
「いや、悪いことばっかりですね。家には帰れない。彼女には振られる。仕事は進まない。」
「そうですか」
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