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気の毒そうな眼差しがこちらに向けられる。その直後、すぐきりっとした表情になって、パンと手を打った。
突然の大きな音に、肩がびくっとなる。
「決めました。この後、一緒についてきてほしい場所があるので行きましょう」
「・・・?」
「私の仕事は、居酒屋の店員をやりながら、不幸な方を見極め、素敵なことをプレゼントすることなのです。あなたが今日会った中で、一番幸せ成分が足りなかったので!」
初対面で一番不幸と言われる僕は、本当に負のオーラが滲み出てるのかも知れない。
「はぁ…」
「そうと決まれば、早く唐揚げ食べてください!わたしも食べるの手伝います」
彼女は机の端に立ててあった箸を二膳とって、そのうちの一つを僕にぐいっと渡してきた。
「でももうこんな時間ですよ」
僕は、言われるがままに唐揚げを皿に取りながら、居酒屋にかけてある時計を指さす。時計の針はすでに1:30をさしていた。一体こんな時間から、どこに連れて行かれるというのか。
「真夜中じゃないと行けない場所なんですよ」
そう言うと、彼女は唐揚げを頬張り、もぐもぐと食べ始めた。
真夜中しか行けない場所?どんなところなんだ?
「マスター!お代はわたしにつけといてね!」
彼女が2個目の唐揚げに手を伸ばしながら、後方に向かって呼びかけた。僕は慌てる。
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