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「あれ?」
少し走ると、前方遠くに山が立ちはだかっている様子が見えた。
「行き止まりですけど、大丈夫ですか?」
彼女はスピードを緩める気配がない。
「普通の人は知らないでしょうけど、真夜中だけ通行できるんですよ。」
彼女は、ギアをまた一段と上げて、どんどん山との距離を詰める。
まじか。流石に無理だろ。でも、こんな最期も悪くないかもなと思った。
「いきますよ!目つぶっててください!
」
僕は、彼女の肩にしがみつきながら、ぎゅっと目を閉じた。
何か柔らかいものにぶつかる感覚があり、前からものすごい風圧で熱風が吹いてきた。
顔もあげられないほどの強さの風に、言葉が出ない。
やがて、風が徐々におさまった。
バイクが少し走った後、静かに停止した。
どこからか、波の音がかすかに聞こえる。
「おつかれさまでした。目を開けていいですよ」
前から、彼女の声がする。
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