お別れの、二年後。

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 アルバイトを終えて帰宅すると、母がはしゃいだように玄関先まで駆けてきた。 「優衣っ。純平くん帰ってきてるよっ」  母のその言葉に、靴を脱いでいた優衣の動きが一瞬止まる。けれど、すぐに再開して、へえ、とだけ言った。 「楽しくやってるみたいよ。なんだかますますたくましくなっちゃってね。髪なんか、こう、おしゃれに逆立てちゃってっ」 「ふうん」  訊いてもいないのに喋り続ける母に、適当に相槌を打ちながら、優衣は廊下を進んだ。  着替えてくる、と言い残して、優衣は階段を上がった。  部屋に入って、電気のスイッチを押す。  レースカーテンの向こう側に、ぬぼおっと立ち尽くす人影が見えて、優衣は思わずびくっと肩を揺らした。  突っ立っていた人影は、隣人の帰宅に気が付いたようで、こちらに向かってぶんぶんと腕を振った。  優衣はバッグを床に置くと、数秒考え込んだ。開けるべきか否か。  けれど、腕は振られ続けているし、しまいにはジャンプまでし始めたので、優衣は覚悟を決めて窓へと向かった。  レースカーテンを開けると、二年ぶりの幼馴染と目が合う。
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