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「いや、まあ、アルバイトって、その……男もいんのかなあって」
「男? そりゃあ、いるけど」
そう答えれば、純平は、へえ、と小さく言ってから、黙り込んだ。
バイト先の男。そういえば、先輩に誘われた、あのバスケットボールの試合はいつなのか。きちんと日付を見ていなかった。
「お前の、何?」
「え? 何が?」
「さっき。なんか言いかけたじゃん」
「あー」
優衣は思い悩んでから、
「なんだっけ。忘れた」
と言った。
嘘。本当は覚えている。純平も、向こうでアルバイトをしているのか、と訊こうとした。
けれど、よくよく考えたら、そんなに知りたいことでもない。むしろ、知りたくない。新しい出会いがあったかもしれない話、なんて。優衣は訊くのをやめた。
バスケットボールの試合の日取りが、いよいよ本格的に気になり始めた。チケットを確認しようと、優衣はバッグを取りに立ち上がった。
すると、背後から、優衣、と呼ばれる。
優衣は立ち止まって、振り返った。
「なに」
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