137人が本棚に入れています
本棚に追加
私の恋敵は、かわいらしくはしゃぐ後輩でも、元マネージャーの大学生でもない。
いつだって、バスケットボールだけだ。あいつだけが、身を焦がすほど、憎たらしい。
いつのまにか優衣は、純平の腕の中にいた。大きな手が、優衣の頭をなでる。
バスケットボールと私、どちらの方が触り心地が好いだろうか。こんな時まで、そんな対抗心が芽生えた。
「覚えてるか? 俺がお前に、弱音吐いた日のこと」
純平が、優衣にそう問いかけた。
「ほら、俺がスランプだった時期、あったろ。いつだったか、バスケット辞めようかなって。優衣にこぼしたこと、あったじゃん」
そう言われて優衣は、ああ、と声を上げた。
「スランプなんて、何一丁前なこと言ってんのハゲって、私が言ったやつ?」
「えっ。うん。えっ? 俺、そんなこと言われたんだっけ?」
思い出すげえ美化してんな俺、と、純平はおかしそうに笑った。
「あの時一番怒ってくれたの、優衣だった。もうすげえ形相でさ。俺殺されんじゃないかって思ったくらい」
「だって、バスケットしか取り柄ないくせに」
誰よりも、たくさん練習してたくせに。誰よりも、何よりも。バスケットが好きなくせに。
誰よりも私が、それを知っていたのに。
最初のコメントを投稿しよう!