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「そうだ! 我が国は侵略の危機に晒されている。宝珠の護りの力、それを貰いうけに来た!」
「ではその為にいかなる犠牲も厭わぬか。是か否か」
「犠牲? はっ! 仲間の命だけでは奪い足らないのか? なら俺の命をくれてやる!」
「是か否か」
「是だ!」
「よろしい、では儀式の場に案内する」
レブナントが浮遊感を覚えたのは一瞬だった。すぐに足が硬い地面をつかんだ。
「これが最後の転移ならいいんだが」
古戦士は毒づいた。
その広間は今までのどの部屋よりも広く、明らかに神聖な雰囲気が漂っていた。壁沿いに左右に並ぶ円柱が、中央奥の高い舞台へ誘うように配置されている。
舞台の上には演壇があり、挟むようにして左右にひとつずつ、立方体のブロックが置かれていた。
「神託の時がきた」
今度は頭ではなく広間全体に声が響いた。演壇の前に演説者が灰色のローブ姿であらわれた。フードの中は暗く表情はわからない。
「今宵は二名の嘆願者。ひとりはセヴェル自治領の守護者レヴナント。そしてひとりは黒い心臓の精霊師ジャーゲルト。どちらも国を護る任を持つ者たち」
外連味がかった声に、レブナントがはっとして周囲を見渡すと、左背後にアルビノの若者を認めた。
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