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 導引師はうなずき――カウシマはいつも無言だ――さっそく大地から生命(アナ・ミス)を引き入れる儀式に入った。 「ジュビア。陣を出るぞ。先に偵察に行ったニ人を追う」  レブナントは仲間の守護者の、人猫(じんびょう)に声をかけた。 「レヴ」  ジュビアが柔らかい黒毛に覆われた頭を横に振る。 「出るのはいいけど、ニ名を追うのは諦めて。時間の無駄よ」  ジュビアがレヴナントに反意をしめす――二人の会話では珍しかった。彼女は陣の外側に立つ四つの結界樹に目をやる。 「急いでいきましょう。()()が保つうちに」  レヴナントは小さく頷いた。そして今度は暗闇に背を向けて座っていた、大きな影に向けて訊いた。 「ポプリスマ、行けるか?」  影は最初、反応しなかった。レヴナントがもう一度呼ぶと、剛人(ごうじん)の女性は振り向き、赤い瞳で古戦士を見返した。  割って入ったジュビアが、人間の方の手で、傭兵同士で発達している手話を使い、ポプリスマに出発の指示を伝える。  剛人は口が利けないのではなく、上位大陸語(ハイ・コモン)が喋れないのだ。通訳の使い魔が闘いの犠牲となったいま、ポプリスマはチームから孤立していた。     
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