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「ねえ兄。私たち、どうせ拾われた命だけれど、宝珠を持ち帰ったらどうなるのかな。蛮国からヒムレンを護った栄誉なんていらない…でも少しぐらい何かもらってもいいよね」  イブリースは微笑んだ。 「静かに…イブリース、何かの気配を感じる」  ジャーゲルトの言葉に体は反応したが、女戦士は話し続けていた。 「私は家が欲しいの。ジャーゲルト兄と私の住む家よ。小さくてもいいから」  暗闇が波うち、蝶の作った光を飲み込んでいく。闇は通路をふさぐ幕のように広がり、そこに一対の巨大な目が現れた。開いた瞳が二人を見つめた。  ジャーゲルトはそれに見られる感覚に、覚えがあった。 「汝はわが宝珠を望む者か。是か否か」  言葉は直接、精神に響いてきた。 「是」  精霊師は答えを念じ返した。 「ではその為にいかなる犠牲も厭わぬか。是か否か」 「是」 「よろしい、では儀式の場に案内する。転移を受け入れるがよい。ただし運ばれるは一人のみ」  ジャーゲルトはその奇怪な目の言葉に悪寒を覚えた。そして本能的に意図を悟った。 「やめろ!」  術の詠唱は間に合わないと察した精霊師は、必死になって腕を伸ばし、イブリースを突き飛ばそうとした。  目の中の瞳孔が十字の形に割れた。そして一条の光が飛び出した。     
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