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週刊なのか隔週なのか月刊なのか、この不動産情報誌の名前がなんだったのか今をもってわからないのだけれど、多分、その都度こんな風に一つのカテゴリーに絞った特集ページを組んでいたのだろう。
それは良いねらいだったかもしれない。
カテゴリーにたまたま合致した物件を探している人にとってみれば、無尽蔵に繁茂する選択肢を前にしても無駄に迷う必要がなく、手間も省けた。
だけど、まさかそのキャッチ・コピーが、床屋の順番を待っている小学四年生のいささか利発すぎる女の子の心を強く揺さぶろうとは、編纂に関わったスタッフの誰一人として思わなかっただろう。
私はその言葉に文字通り釘付けになった。
「……豊かな生活は日当たりから」
声にも出してみた。
もちろん、それが部屋の日当たりについて言及していることも、それだけで生活が豊かになるだなんて過剰に表現していることも理解していた。
誰かのありがたいお言葉や何かの経典の一節などではなく、ただの雑誌の特集コーナーの見出しなのだ。
だけどその言葉は私の心に何かを必死で訴えようとしていた。
そして私の心はその言葉に必死で応えようとしていた。
豊かな生活を送りたかったのだろうか?
それとも日当たりの良い家で暮らしたかったのだろうか?
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