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というよりも初めから理由なんてないようなものだった。
それは遥か遠い昔、ある日どこからともなくやってきたと思ったらそのまま無断で私の心と人生の中に住みつき、やがては私の全てを支配した。
誰かの完璧な計算の元で何者かの手によって何重にも張り巡らされ、何某(なにがし)かの思惑のままに何気ない日常の中へと巧妙に仕組まれたトラップは、幼い私を否応なくその冷たく無感情に光る鉄の牙で捕らえてしまったのだ。
小学四年生の春休み、優しい春の風が街中を吹きぬける穏やかな日曜日の昼下がり、私はある言葉と運命的な出会いを果たした。
私はとにかく快活な子供だった。
家の中で気取りながらおままごとや人形遊びをするよりは、鼻水を垂らした男の子達に混じり、泥だらけ傷だらけになって外で駆け回っている方が好きだった。
身長だって腕っぷしだって負けず嫌いの性格だって、近所の子供の中でも一番だった。
真っ黒に日焼けし、膝を擦りむき、スカートを捲くりあげながら(一応、女の子らしい恰好はさせられていた)私は太陽の子供の一人として元気に成長していった。
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