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だから髪だって長く伸ばして結うでもなければアクセサリーを付けて可愛くするでもなく、ずっと男の子のように床屋で短く刈り上げてもらっていた。
その方が動きやすかったし、涼しかったのだ。
そんなある日のこと、さすがに母が危機感を抱いたのか、半ば強引に髪を伸ばさせ、ある程度の長さになったところを見計らって自分の通う美容室に私を一緒に連れて行ったことがあった。
女の子らしい髪型にさせようとの魂胆だ。
夕飯に私の大好物を作ってくれるという話に簡単に乗せられ、為されるがままに大人しく椅子に座っていたのだけれど、カットが終わり、大きな鏡に映し出された自分の姿を見た瞬間、私は人生で初めて鳥肌が立つという生理現象を体感することとなった。
母をはじめ、その場にいたスタッフも皆、可愛いだとかお人形さんみたいだとかお仕着せるように私を褒めた。
しかし、私にはその鏡の中にいるお人形さんがどうしても好きになれそうになかった。
その姿はまるで、日頃あまり良好な関係を築けているとは言い難いクラスの女子の一派閥の女の子達にそっくりだった。
彼女達は少し大人びた早熟な子が集まったグループで、日々ティーンズ雑誌を読み漁っては研究し、恋だの愛だのに只ならぬ興味を抱き、オシャレをすることに命と時間とお小遣いの全てをかけていた。
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