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ミスター・レインマン(Ⅱ)
母は自殺、父は消息が不明、更に今後の身元の引受人もまだ決まっていないレインマン少年の前途は、誰の目から見ても深い闇と多難の道のりしか待ち受けてはいないように思えた。
母の死が判明してから数日が経った。
しかしながら、未だに誰一人として彼に向かって母が殺人を犯した上に死亡したという残酷な事実を伝えられないままでいた。
レインマン少年のこれまでの僅か八年あまりの人生の中に巻き起こった波乱を客観的に眺め、そしてこれから彼が人生で抱え込まなくてはいけないであろう様々な問題を考えた時、医師も看護師も職務を越えた一人の人間としての同情と慈しみの念が、いけないことだとは思いつつも自然に込み上げてきてしまった。
人間の生死を司る神聖な医療という仕事に従事するからには、私情や感情を時には強く押し殺さなければいけない場面に何度となく遭遇する。
……そんなことは研修や看護学校時代に嫌というほど叩き込まれていたはずだった。
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