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それは元来、愛想の良いレインマン少年にとっては初対面の人を相手に決まってする挨拶みたいなものだったのだが、怯える祖父母にとっては心を焼き尽くす灼熱の炎となり、身を劈く稲妻となってしまった。
「許してちょうだい!」
祖母は突然、少年に激しく抱きつき、
「ごめんなさい!ごめんなさい!あの子を死なせるつもりなんてなかったのよ!ごめんなさい!許して!お願いだから許してちょうだい!あなたから母親を奪うつもりなんてなかった!ホントよ!ホントだから許して!」
と気が触れたように泣き叫んだ。
「チクショウ……死ぬことなんてなかったんだ……チクショウが……」
と祖父はその場に膝から崩れ落ちた。
怒りや後悔や悲しみなどが一息に込み上げ過ぎて収拾がつかなくなっているようだった。
うまく言葉にして表せられなかった感情を、爪が食い込むほどに両手の拳を握りしめたり、血が滲むほどに強く唇を噛んだりすることでなんとか発散させていた。
レインマン少年は痛いほどに自分にすがり付いて喚く女性に困惑し、助けを求めるように医師の方を見た。
「○○さん、お気持ちはわかるんですが、とりあえず一回落ち着きましょう、ね?」
騒ぎを聞きつけた他の医師や看護師も病室に駆け付け、数人がかりで祖母を少年のそばから引き剥がしにかかった。
今ならまだなんとか間に合いそうだが、このままではいらないことまで少年に教えかねない。
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