3・マリコの親しい友達

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 二流の私立大学の文学部英米文学科卒で、とりたてて資格も得意なこともない平凡な顔立ちの、いささか皮肉屋の気配がうかがえる中肉中背の女子を採用してくれるような寛容な企業は、このご時世ではなかなか見つからなかった。  有名どころはもちろんのこと、これからの日本経済を担って行くであろう最先端の人気企業などでは、書類選考の時点で落とされてしまい、面接さえさせてもらえない始末だ。    まあ、そもそも私は世界を股にかけた大きな仕事をしたいだとか、一流企業の肩書が欲しいとか、人も羨む高給取りになりたいだとかいう野心に乏しかった。  一人で応募するのが不安だから一緒に出してくれと友達にしつこく頼み込まれなかったとしたら、自分からわざわざそんな一流企業に履歴書を送ったりすることは絶対になかった。  万が一、何かの手違いか神様の気まぐれな采配によってそんな派手でミーハーな会社に受かってしまったとしても、きっと私は周りの洗練された人達の優秀さと煌びやかさに圧倒され、自分のあまりのみすぼらしさから死にたくなってしまうだろうことが目に見えていた。  身の程をわきまえさせたら私くらい秀逸な人間はいないのだ。  ……ちなみに一緒に受けることを持ちかけてきた友達ももちろん(と言ってもいいだろう)落とされた。     
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