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世界に自分達の好きな物だけをはべらせていたいのだ。
そんな狭い世界の中で何を威張って何を必死で守っているのか、やっぱり彼女達の考えなんて私には一つも理解できそうになかったし、そんな気色を別段隠そうとはしなかった。
だから巧みな技術によってカットされ、可愛らしく小洒落てしまった自分の姿も到底理解できそうになかった。
そこに写る自分が彼女達のようにとても意地悪く、傲慢そうに見えて仕方なかった。
呆然としている私を尻目に、母親は心から満足した様子で、カットを担当したスタッフや顔なじみの客たちと、整えられたばかりの愛娘の髪をオカズに和やかに談笑していた。
私はそんな大仰に喜んでいる母を見て、なんだか恥ずかしくなった。
そしてそれにも増して怒りとも嫌悪ともつかないムカムカとした感情が湧き上がってきた。
娘が意地悪そうになったって言うのに何を嬉しそうにしているのお母さん?
見た目さえ可愛くなればそれでいいの?
私もあの子たちみたいに色んなものを馬鹿にしたように生きればいいの?
そう思うのが早いか、私は衝動的に手近にあったカット用具一式が置いてあるトレーの中からハサミを一本取り、たった今キレイに揃えられた自分の前髪をざっくりと真横に切った。
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