3・マリコの親しい友達

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3・マリコの親しい友達

 確固たる意志のお導きによって辿り着いたアパートに越してから、はやくも三か月が経とうとしていた。  新年度、新入学などいろいろな『新』に彩られた四月が過ぎ、まだまだぎこちのない五月を越え、人々がようやくある程度おさまるところにおさまり始める六月も半分を終えた。  世間では迫りくる梅雨入りを快く思わない人たちの憂いと、ジューン・ブライドを間近に控えて浮き足立っている花嫁たちの高揚感と、相も変わらず変化のない生活を送り続ける私の退屈さとが、等しく街の風の中に溶け込んで吹き抜けていた。    そう、新しい生活の流れに身をやつした私がワクワクしながら運ばれて行ったその先には、また新しい退屈が愛想よく手を振りながら待ち受けていた。  新しいとは言っても、服の色が緑から黄緑になったくらいの微妙な変化しかなく、つるりとした外観も内容の希薄さも、期待していたようなマイナーチェンジは一つも為されてはいなかった。  私が何通も送った要望やクレームの手紙たちは、誰の心も揺り動かすことなくあっさりと黙殺されてしまったようだ。       
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