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「響くん?顔赤いけど風邪ひいちゃった…?」
桃子が腕を伸ばしてくるのを響は思いっきりよけてしまった。
「わっ、ご、ごめん、そういうわけじゃなくて…」
「ごめんね、私も昔みたいにしちゃった」
桃菜は少し傷付いたような表情をする。こんな顔をさせたかったわけではない。
「も、ももちゃん、今まで何してたの?」
自分が作ってしまった重い空気を変えようと、響は気になっていたことを尋ねる。
「面接練習」
「面接?」
「そう、私もうすぐ受験だから、本番に向けていろいろな先生に面接練習してもらってるの」
「そうなんだ…」
靴箱から自分の靴を取り出し、履き替える桃菜が近くにいるのに遠い存在に感じられた。
(そうだよね…ももちゃん、三年生なんだもんね)
二年の年の差とは案外大きいものだ。やっと同じ学校に通うことができると思ったのに、三月には卒業してまた別の場所に行くことになってしまうのだ。
「響くん?遅くなっちゃうから早く帰ろう?」
「そ、そうだね」
(ヤバい、ももちゃんといるのにぼぉーっとしてた)
響は我に返り桃菜の後を追って昇降口をでた。
「わぁ~雪降ってる!初雪じゃない!?」
外にでればチラチラと白い結晶が空から降ってきていた。
「ほんとだ…」
どおりで寒いわけだ。風は冷たいけれど初雪をみてはしゃぐ桃菜を見ていると、不覚にも胸がキュンとした。
(子どもみたいにはしゃいで…)
「やっぱり、好きだな…」
「え?響はくん。今、なにか言った?」
「い、いや、何も言ってねーよ」
危ない、心の声が漏れてしまっていた。高校に入って大人っぽくなった桃菜の子どもっぽい姿を見てしまっては、より一層惹かれてしまう。
(いつになったらこの気持ち、告白できるのかな)
桃菜は受験生で、余計なことを考えさせたくない。なんて言い訳をして告白しようとしない自分が嫌になる。ただフラれるのが怖くて、今の穏やかな関係にしがみついているのだ。
「ひびきくーん?どうしたのー?」
雪と戯れて進む桃菜はもう校門を出そうだった。
「どーもしてねーよ!」
俺はそんな桃菜の後ろ姿を追った。
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