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「響?帰らねーの?」
「今日は待ち合わせしてるから先帰ってて!」
「わかった じゃあ、まあ明日な!」
「おう!」
11月も終わりに近づき、日々寒くなってきた。
下校時間もとっくに過ぎた昇降口は先ほどまでの賑わいを失い、今では静かになっていた。開いた入り口から冷たい風が吹き込んでくる。
「さむっ…」
制服の上に羽織っただけのコートで塞ぎきれる寒さではなかった。響は風に当たらないよう柱の陰に移動する。
「ももちゃん、早く降りてこないかな…」
少し前に桃菜の靴があることは確認している。だから、まだ学校に残っていることは確実なのだが、人が少なくなっても降りてくる気配はない。
誰もいない昇降口で、響は白い息を吐いた。
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