寒空の昇降口

2/7
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「響?帰らねーの?」 「今日は待ち合わせしてるから先帰ってて!」 「わかった じゃあ、まあ明日な!」 「おう!」 11月も終わりに近づき、日々寒くなってきた。 下校時間もとっくに過ぎた昇降口は先ほどまでの賑わいを失い、今では静かになっていた。開いた入り口から冷たい風が吹き込んでくる。 「さむっ…」 制服の上に羽織っただけのコートで塞ぎきれる寒さではなかった。響は風に当たらないよう柱の陰に移動する。 「ももちゃん、早く降りてこないかな…」 少し前に桃菜の靴があることは確認している。だから、まだ学校に残っていることは確実なのだが、人が少なくなっても降りてくる気配はない。 誰もいない昇降口で、響は白い息を吐いた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!