寒空の昇降口

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(こっちに戻ってきてももちゃんを見つけるって…俺、ヘンタイだろ…) 桃菜のことを待ちながら昔のことを思いだしていた響は過去の自分の行動にドン引きする。 まあ、幼いころに遊んでその面影を高校生の桃菜に見ているのだ。変わった部分が多いにも関わらず、桃菜のことを見つけたとあればヘンタイの域だろう。 (でも、あの時のももちゃんも…かわいかったんだよな) 「って、ああ!!もう!俺ってヘンタイじゃん!!」 静かな昇降口に響の声が反響する。 羞恥心と自分のヘンタイ加減に呆れて、頭を抱えた。 (でも、ちっちゃい時からももちゃんのことは好きなんだよな) この気持ちだけは変わらない。今でも桃菜のことを目で追ってしまうし、話をすればドキドキと心臓がうるさくて上手く話すことができない。 (引っ越す前からずっと好きなんだから、俺はホントにももちゃんのこのが好きってことでいいよな…?) 小さいころだけなら淡い恋心とか、キラキラとした思い出と言うことで恋にはカウントされない。けれど、大きくなって再会しても好きで、こうして約束もせずに寒い昇降口で待っていられるのだ。これはきっと恋なのだろう。 響はずっと抱き続けていた気持ちに時々混乱してしまうことがある。 (それにしても遅いな) 響は冷えてしまった自分の手のひらにはぁーっと息を吹きかける。 約束をしていればこんな寒いところではなく教室で待っていることもできるだろう。けれど、別に桃菜と帰る約束をしているわけではない。ただ急に一緒に帰りたいと思いついて桃菜が降りてくるのを待ち伏せしているだけなのだ。 (何してるんだろう…) 授業が終わってからだいぶ時間が経っている。掃除当番であったとしてもこんな時間まではかからない。響には関わりがないような用事があるのだろうか。 (まさか、実はもう帰ってました、とかはないよな) 確認したはずだからないとは分かっていても、想像してしまったから不安になる。 響は立ち上がり、三年生の靴がおいてある靴箱のほうへ確認に行った。 (よかった…まだ帰ってはいない…) 桃菜の靴箱にはローファーがきちんと入っていた。 (まだいるってことは…何してるんだろう?) 先生から聞いていた月の予定を思い返してみてもなにも思い当たるものがない。先生の話をまじめに聞いていない部分があるので、確実に放課後の予定はないと言い切ることはできないが。
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