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「はぁ…」
なかなか降りてこない桃菜に待ちくたびれて響はため息をつく。
(これはもう帰れってことなのかな…)
冬の冷たい風が吹き込む昇降口で待ち始めてどれくらい経ったかわからない。けれど、ここまで待っても降りてこないなら、今日はあきらめて一人で帰れと言われているようだ。
(実際、これって待ち伏せだもんな…)
桃菜に一言連絡を入れて待っているならばいいのだが、何も連絡をせず、ただ一緒に帰りたくて待つなんて、待ち伏せだし、質の悪いストーカーではないか。
(あと、一分。あと60秒数えて降りてこなかったら帰ろう…)
帰ったほうがいいとは思いつつも、ここまで待っていたのなら一緒に帰りたい。あきらめの悪い自分に言い聞かせるようにして、響は数を数え始める。
(54、55、…56、…57、…5…8、ごじゅう…や、やっぱり100までにしよう)
俺の数えるスピードが早かったかもしれないしな
響はまた1から数え始める。
(1、2、3、…はぁ、手が冷たい)
数える合間に冷たくなった手をこすったり、息を吹きかけたりして何とか数える時間を長くする。
(89、90、うぅ…寒いな…)
もうすぐ100になってしまう。響は立ち上がり、身体を温めるため昇降口内を動き回る。その間カウントは止まっていた。
(ももちゃんの教室見に行ってみるか…?いや、その間にすれ違ったらイヤだな…)
教室を見に行こうにも昇降口を離れられない。
そうこうしているうちに昇降口をもう五周はしていた。
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