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暴走自転車。
それが問題になり始めたのは、いつ頃からだったろうか。
人通りの多い町なかを。いや、時には都心部の雑踏のただなかをも。
我が物顔で。猛スピードで自転車を疾走させるやからの、なんと多いことか。
確かにその一部は、荷物の搬送等の理由で、ほんとうに急いでいるのかもしれない。
だが大部分は、危機意識も公衆道徳も何もなく。ただたんに、
『疾走して、かつブレーキを踏みたくないだけ』
なのだという。
歩行者や路上の障害物?を。右に左にハンドルを操作して回避し。そんな自分のテクニックなどとは本来言えないテクニックに、酔いしれているだけのようなのだ。
たかが自転車ーーなどとはけっして言えない。
突っ込んでくる自転車という名の凶器と激突し、重傷を負い。さらに死亡にまでいたったケースは、いくらでもあるのだから。
その男も、20代であったけれど無職でーーヒマをもてあましていた。
そうして、雑踏で自転車を暴走させる常習者となっていた。
アーケード商店街や、国道・県道沿いの歩道等々。
本人だけが『スカッとする長いコース』と思っている場所を、自転車で突っ切ることに快感をおぼえるのだ。
(歩行者を、うまく避ければ避けるほど点数が増える)
それは男にとって運だめしであり、スリルを愉しむ無料でお手軽なゲームなのであった。
(絶妙の感覚でハンドルをさばく! 俺みたいな反射神経の持ち主が事故るハズはない!)
当然と言おうかーー男は自分を過信していた。
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