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全てを知っている、というように、頭が無言で首を振った。――それが全てを物語っていた。俺の実家のある北西の小さな村は、もう既に無いのだ、と……。
以前より不穏な動きが懸念されていた、北の領主が、とうとう数日後同盟を破って、こちらへ攻めいるつもりである。という報が入ってきた。そのような報せは、そうそう漏れるようなものではない。しかし侵略される側に、命乞いを求める者が合わせて数人、その報と共にこちらへ寝返ってきたのだ。北の領主は恐らく落ち目なのであろう。
我々の領主様は、まず北の領地の村の女子供などを、自らの城下町に呼び寄せ匿うという令を発した。その後、健康な村人たちを集めて隊を組み、北側で待ち伏せをする、我はと思うものは集え、と召集をかけた。戦を行うときは、城につめている武士だけでは、とてもじゃないが人手が足りない。領地の民を足軽として組織するのは必須だ。しかも士気が高くなければ戦場で役に立たない。自らの家族、領地を大切にし、守ってくださる領主様の意に答えようと、民が自ら意を決するのを促すため、そのような令を発されたのであろう。
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