第一話 薄明

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 領地の北には街道沿いに、商業により栄えた宿場町の機能を持つ村がある。民の数も多く、恐らくその商業都市の金を狙った進軍であろうことは目に見えていた。領主様もそこから通行税を徴収している関係上、絶対に手放したくない。  とはいえ、素人の集まりの足軽で倒せる敵の数など他かが知れる。自分が所属する忍隊にも急ぎ伝令が下った。先に闇討ちし、野戦で奇襲をかけ、兵の数を減らし、疲れさせておくようにということであった。  先の伝令で、北の村の女子供を護衛し、湖の傍にたつ城の城下町へ護送の任に着いていた俺は、野戦の命を続けて受け、とんぼ返りで北へと戻った。疲れなかったと言われれば嘘になる。しかしそこから北西にいった外れの場所には、自分が生まれ育った村があった。小さいが大切な人達の住まう村だ。今回標的となった村よりは、かなり離れているとはいえ安全とはいえない。俺は元々百姓の四男坊だ。こんな仕事に就いているのは元々その村に住む、大切な人、姉のためだった。村を巻き込むような戦になるのを防ぎたい。そう思えば疲れよりも、任を滞りなく遂行し、成功させることの方が大事だった。  報の通り、北の連中は想定された時間、場所に現れた。しかし当初の予想より、雑兵の数が多かった。     
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