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「いえ、将旗くんはとても優秀なんです。先輩も適合者ならわかると思いますが……彼はあの、ティラノサウルスを宿すことができるうつわの持ち主なんです」
「え、ティラノサウルス? そ……それはすごいなあ」
高橋は驚きつつ再びメガネを上げた。将旗の前にしゃがむと、朗らかに微笑む。
「小学生だというのにキミはすごいなあ。僕は高橋。改めて、よろしくね」
「あ、はい。城本将旗……です。よろしく……」
そして高橋は身につけていた軍手を外して床に置くと、将旗へと左手を差し出した。手を握り返すと、高橋の笑みはより深くなった。そして高橋は軍手を置いたまま立ち上がる。
「あ、これ……忘れてます」
「おや、軍手を拾ってくれたのかい。ありがとう」
軍手を受け取った高橋は、将旗の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「キミは本当に、勇敢な子だ」
ムッとする将旗を撫で回す高橋は、微笑みを崩さない。しかし、メガネの奥の眼光だけは、誰も知らないところで怪しく光っていたのだった。
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