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将旗と、ランフォを肩に乗せたタクトは、高橋の後に続き、廊下を進んでいた。
「地震が起こったときは本当に驚いたよ。それがまさか、ドラゴトピアとかいう異星のせいだなんてね……そしてそんな話を、オカルトに興味なさそうな鍔佐くんから聞くことになろうとは、思いもしなかったなあ」
「オレも、高橋先輩とこんな話をするなんて考えもしませんでしたよ」
一通りの状況を聞き終えた高橋は、疲弊したように額の汗を拭った。
(わかる。オレもはじめてタクトの話を聞いたときは、めっちゃ疲れたから)
そして案内されたのは、崩壊のダメージが比較的少ないきれいな教室だった。教室の役割を示す札には、生徒会執行部と書かれている。
「ちょうど、ここが一番安全そうだったんだ。これからどうなるかわからなかったから、食料や生活に必要そうなものはここに集めておいた。今は僕しかいないし、キミたちも自由に使ってもらって構わないからね」
高橋の言うとおり、教室の隅には非常持ち出し袋や飲料水が詰められた箱、学校中からかき集めたと思われる菓子などが山のように積み上げられていた。ほかにも、毛布や着替えのブレザーまで用意してあり、籠城する環境が整っていた。
「リボン……これって、女子用のブレザー?」
「そうだよ。万が一、女性がやって来たときに着替えがなかったら困るだろうからね」
高橋は、笑うと目が限りなく細くなる。その表情はいつ見ても同じ形をしており、少し不気味だった。だが、高橋はタクトの友人だ。タクトに相談するわけにはいかなかった。
将旗は意識を変えようと、生徒会執行部の窓から外を眺めた。校庭に広がる草花は、遠目に見ると色彩豊かなじゅうたんのようだ。
「ここは見晴らしがいいだろう」
将旗の隣に並んだ高橋は、校庭の先に広がる廃墟群を見つめる。
「僕もね、はじめは絶望したよ。学校や町は壊れ、友人たちは深い眠りについた。この世界でこうして動いているのは僕だけかもしれないと考えると、とても心細かった」
高橋の目は、陽光を反射したメガネに阻まれてよく見えない。
「でも、ここから世界を眺めると、モヤモヤも晴れた。むしろこれまで人間が築き上げてきた文明こそ、幻だったんじゃないかとさえ思えた。そうだ、世界がなくなったのなら僕がこれから世界を作ればいいんじゃないか……って思えるようになったんだよ」
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