車輪の音

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 電車が駅に着くと,誰にも顔を見られないように下を向いてホームに降りた。何人かの酔っ払いが私を見ているように思えたが,無視してホームを歩き改札へ続く階段に向かった。  人の少ないホームを歩いていると,あの人の声が聴こえたような気がして脚を止めた。 『え……?』  ゆっくりと顔を上げ周りを見回したが誰もおらず,風の音が私の心に悪戯をしたんだろうと思い,鞄を握り締めて再び歩き出した。  あの人の声が聴こえたと思っただけで胸が高鳴り,あの時ダメモトで告白しなかったことを後悔した。  高鳴る胸の音に心が耐えられないよう気がした。勝手に脚が速くなり,やがてホームを小走りで駆けだした。  そして再び,あの人の声が私の耳の奥で微かに聴こえた。
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