第一話 思い出と少女

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「はい、チーズ。ケヨ」    シャッター音が、湿った雨音の中に響く。 「上手く撮れたケヨ」 「こんな時に撮ってる場合~?」 「これでクマデとしーちゃんは、一心同体ケヨ」  すると、再び志穂の身体が発光し、その姿かたちを変貌させた。 「これは、何だ!?」    先程の可憐な姿とは打って変わり、志穂は雄々しい狩人の衣装を身に纏っていた。自撮り棒は銃剣に変化し、クマデは毛皮の防寒着となって志穂を包んでいた。 「人呼んで、マタギ・スタイル。ケヨケヨ」 「何だその姿は。食事の場に、相応しくない!」 「当前! だって狩るのは、私!」    懐から赤いフィルムを取り出し、銃剣に装てんする。トリガーを引いた瞬間、巨大な火球が発射された。 「がああっ! バカな、押されているだと?」    両腕でガードし、致命傷は避けられたものの、怪人は明らかにダメージを負っていた。 「赤のフィルム、002番・『フレイム』ケヨ」 「いける、これなら!」 「舐めるなぁ!」    次弾を発射する寸前に、怪人が一瞬で距離を詰める。志穂も瞬時に対応し、鉤爪と銃剣が火花を散らした。両者一歩も引く気配の無い、長く激しい鍔迫り合い。 「桜子さんの思い出、返してください!」 「思い出など、人間にとっては無用の長物! 何の役にも立ちはしない。あの女の言う通り、時として、心を押しつぶす重荷にもなろう!」 「それでも思い出は、人の生きた証! 思い出がなきゃ、生きていけないの!」 「生の証など、『今』にしか無かろう! それに思い出を糧とするのは、我々『プレゼント』とて同じ!」 「だったら、倒す!」    鍔迫り合いの最中、志穂は一瞬のチャンスを見つけ、銃剣のトリガーを引く。
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