第一話 思い出と少女

2/17

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「思い出なんていらない。今が、みじめになるだけ」 「では望み通り、いただくとしよう」    志穂は目を疑った。  今まさに展開される、非現実的な光景を前にして。    人間の頭部から抜き出された、革表紙のアルバム。  山羊頭の怪人が、それを恍惚とした表情で飲み込んだ。 「ああ、何と甘美な……。やはり人の『思い出』は、クセになる……」  アルバムを、記憶を抜き出された女性が床に倒れ伏す。  その眼はみるみる内に光を失い、涙で腫れた重い瞼に覆われていった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加