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「思い出なんていらない。今が、みじめになるだけ」
「では望み通り、いただくとしよう」
志穂は目を疑った。
今まさに展開される、非現実的な光景を前にして。
人間の頭部から抜き出された、革表紙のアルバム。
山羊頭の怪人が、それを恍惚とした表情で飲み込んだ。
「ああ、何と甘美な……。やはり人の『思い出』は、クセになる……」
アルバムを、記憶を抜き出された女性が床に倒れ伏す。
その眼はみるみる内に光を失い、涙で腫れた重い瞼に覆われていった。
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